SaaSの終焉か、進化か 〜AIエージェント時代にSaaS企業が取るべき戦略〜
2026年3月12日
SaaSの成功とその終わりの兆し
2026年1月28日の日経新聞のWebサイトに「【SaaSの死】 業務ソフトにAI代替の荒波 4社時価総額15兆円消失」という見出しの記事が掲載されました。
その内容は、概ね以下のとおりです。
SaaS企業の株価が、AIによる代替懸念から低迷している
米セールスフォースなど大手4社(インテュイット社、米アドビ社、米サービスナウ社)の時価総額は2025年末から1ヶ月足らずで15兆円減った
ソフトの使い手が人からAIに代わり、事業モデルが揺らぐという警戒が強まる
AI企業であるアンソロピック社の新サービス「Cowork」によって各社の株価急落
SaaS各社も自社ソフトにAI機能の搭載を進めたり、AI技術をもつ新興企業と提携するなどして対策を進めている
ご承知の通り、SaaSとは「Software as a Service」の略称で、ソフトウェアを買い切るのではなく、インターネットを通じて毎月定額あるいは毎年定額で機能を利用するソフトウェアをサービスとして利用する仕組みのことです。2000年初頭からSaaSベンダーが現れ、CRM(Customer Relationship Management)をクラウド経由で提供したセールスフォース社はSaaSの先駆けとなりました。
SaaSが提唱される前は、ソフトウェアはパッケージとして購入し、個人はPCにインストールし、企業はデータセンターにあるサーバーにインストールして使っていました。つまり、オンプレミス環境でのソフトウェア利用が前提でした。
1995年のWindows95の販売を契機にインターネットが普及し、多くの個人も企業もインターネット上のコンテンツやサービスを利用することになり、1990年代後半はドットコムという熱狂の中にいました。
ソフトウェアを提供している全ての企業はオンプレミスで使うことを前提にしていましたが、通信インフラが発達しインターネットが急速に普及したことで、AmazonやeBayといったコンシューマー向けビジネスをしている企業は、インターネットを活用した新しいビジネスモデルで、街の本屋や小物販売店という業界を破壊し始めていました。しかし、エンタープライズソフトウェアの世界では何も変化がなかったのです。
セールスフォース社の創業者であるマーク・ベニオフは、ソフトウェアが物理的なパッケージではなく、インターネット経由で提供されるサービスになれば、大規模なサーバも不要になり、高額な初期投資もなくなり、月々の利用料だけで必要な機能を使えるようにすればいい。そうすれば、ソフトウェアをインストールすることや設定することも不要になり、常に最新機能をどこからでも利用できるようになる。ベンダー側としてもソフトウェアをCD-ROMに焼き付けて販売する必要がなくなる、機能拡張のたびに新しいCD-ROMを配布する必要もなくなりコストが大幅に削減できる。と考えたのです。
そしてこのように考えたマーク・ベニオフは、「ソフトウェアはもういらない(No Software)」という、刺激的なキャッチフレーズで、ベンダーによるソフトウェアの提供形態に変化をもたらし、一括払いから月額または年額の料金(サブスクリプション)という支払い方法に変化させ、ソフトウェアは資産計上ではなく、まるで電気や水道のような費用計上になるような財務的な変化をもたらしました。